☆★☆      行き着いた先は・・・? < 第4次聖杯戦争 終了直前へ落下 > ☆★☆ 

 

あの時、あの場での俺が下した判断は、間違いじゃなかったと思っている。
そう……俺が自分で判断して動かなかったら、あの場にいた皆はもちろん、冬木の街にどれだけの被害が出るかわからなかったから。

でもさ、その代償が俺にとってトラウマに近い記憶でもある、あの『第四次聖杯戦争』の終了直後って、どうなんだろうか?

今までの経験から、酷く動揺したりする事はなくなったけれど、それでも目の前に広がる光景は、見ているだけでこちらにも辛いものがあった。
周囲を包む、街を焼き尽くさんばかりの業火に、瓦礫に下敷きになっているがゆえに逃げ出す事が出来ない人々の怨叉のうめき声。
空に写し出されているのは、漆黒の太陽。
……って、はぁ?

ここまで見るまで、全く気が付かない俺もおれだけど……これ、まだ完全に終わっていないんじゃないのか?

まだ、アレが空に浮かんでいるなら、切嗣の令呪によってセイバーが『約束された勝利の剣』を使う前だって事になる。
これに関しては、当事者たちから聞いた話なので間違いないだろう。
だとしたら、俺の時の様にまだ幼い『衛宮士郎』が業火と瓦礫に埋もれた街の中を一人でさまよっている事になる。
そう考えた瞬間、俺は迷わず走り出していた。

あの時、俺のことを救ってくれたアーチャーの様に。

俺にとって、あの時アーチャーの存在がどれだけ心の救いになったか。
一人きりでさ迷い、ボロボロでもただ動けるというだけで、瓦礫に埋もれた人々からの怨叉の声をぶつけられた。
当時は、真剣に思い詰めたものだが……冷静になって考えれば、良く分かる事。

幾ら助けを求められても、まだ幼く瓦礫の一つも持ち上げる力のない子供に、何が出来ると言うのだろう?

彼らからすれば、文字通り『藁にもすがる思い』だったかもしれない。
だが、何も出来ないに等しい幼い子供相手に一方的な気持ちを勝手にぶつけておいて、それが叶わないからと怨さの念を抱く方が間違っている。

まして、その対象が同じ災害に巻き込まれた被害者なら、単なる八つ当たりでしかないじゃないか。

大体、だ。
自分が逆の立場に立たされた場合、本当に他人を助けるべく危険を省みずに動ける人間が、どれだけいるだろうか?

これ程の大災害では、人命救助よりつい自身の身の安全を優先させたとしても、仕方がないとみなされる。
だからこそ、我が身可愛さで逃げ惑う者も多いのだ。
それに……目の前に広がる瓦礫の山は、早々簡単に人の手で動かせる物じゃない。
助けを呼ぶにも、どこまでこの業火の被害が延びているか、この状況下では全く分からないのだ。

更に付け加えるならば、これは『聖杯戦争』であり『魔術師』たちの手で引き起こされた災害であり、様々な魔術行使の隠蔽の為に打たれた手によって、まともな救助活動が出来るのかすら怪しい状況で。

『魔術師』は、魔術を用いた研究など目的を果たすためならば、ある程度まで一般人の被害は許容するからな。
だとすれば、間違いなく『聖杯戦争』が終結を見せた上で、証拠隠滅が済むまでは例え救助活動の為でも、一般人をこの地域に入れるとは思えなかった。
寧ろ、被害者達があまり生き残って居ない方が良いと思う者も居るかもしれない。

一番の証拠隠滅とは、目撃者を居ない状態にすることだろうから。

特に、判断能力が有るとみなされる大人は生き残らない方が、彼らには都合が良いだろう。
この時代の『衛宮士郎』のような子供には、通常でも証言能力は無いという扱いをされるのだから、こんな状況下では被害に遭って一時的に混乱したとみなされるだけだ。
少なくとも、普通の大人に向けて何を言っても取り合ってすらくれない事は、ほぼ間違いない。

そんなことを頭の中で考えつつ、俺は『衛宮士郎』の姿を探した。
早く彼の元に駆けつけないと、【嘗ての俺】のように彼の心が限界を迎えてしまうだろうから。
そうなる前に、早くその身柄を保護したい。

歩きにくい瓦礫の中を走りながら、俺はそれだけを考えていた。

その間、ただ走り抜けただけじゃない。
未だ瓦礫に生き埋めになっている人の中で、今の俺に出来る手段で救出が可能な相手を助けながら、だ。
その際、主に使ったのは【マグダラの聖骸布】である事を、明記しておく。

もちろん、目撃されても言い訳が出来るように、まるで布槍術と思わせるモーションを幾つか見せての使用だが。

ただし、俺も【人を探す】と言う目的を持ってこの劫火の中を走り回っている状態なので、瓦礫の山から救助した相手は簡単な応急処置をした上でそこに放置するしかない。
助け出された本人たちも、俺がまだ【他の救助へ向かう】と告げれば、それ以上俺を引き留めようとはしなかった。
いや……本当は、自分の事を優先して欲しかったのだろうが、先程までの自分と同じ状況で救助を求めている被害者たちを【見捨てろ】とは、人道的に言えなかっただけだろう。

なにせ、俺が救助した人々の大半が瓦礫によって生き埋めになっていても、直接瓦礫に押しつぶされている場所は僅かだった為に比較的軽症で、応急処置をすれば何とか自力で動けなくもない者たちばかりだったから。

嘗て……俺が受けた大災害での一番の被害は、周り一面を埋め尽くすような業火によって齎されたものだ。
瓦礫に生き埋めになっても、それだけならばまだ被害はもっと少なかったはずだと、当時の災害調査の結果でも出ている。
事実、現時点で呻いている人たちの声が聞こえるという事は、まだ瓦礫の下で生きている事を示していた。
なのに、あれだけの数の人が死んだ理由は、それこそ簡単なものだ。

生き埋めになった状態のまま街を飲み込む業火に飲み込まれ、逃げる事も出来ずに生きたままその身を焼かれたから。

だから、その状態から何とか解放した人間たちが、自力で動ける可能性があるのならば、生き残れる可能性は一気に上がるだろう。
少なくとも、何もできないまま死んでいくという事はない。
こんな状態の中を走りながら見つけた相手の大半は、瓦礫さえ何とかすれば自力気動く事が可能な人々だったのだ。

救助を待てない状況下である以上、軽い応急処置を受けてもなおその場に蹲ったまま自力脱出を試みないのは、自分で死を選んだに等しい。

そんな相手に、誰かを恨む資格などない。
少なくとも、自力で脱出の可能性が上がった状態になったのだ。
それを生かさないで、どうして他人を恨める死角があるだろう。

だって……そうだろう?
現状では、この劫火が燃え盛る中にいて未だに瓦礫に埋もれたまま、助けられないでいる人の方が圧倒的に多いのだから。

そうして……業火の中を捜して歩いた結果、漸く『衛宮士郎』の事を見付け出した。
本当に心身共に、ボロボロになって危うげな様子で、フラフラと歩いている『衛宮士郎』を。
その姿を見た瞬間、俺は胸が締め付けられるような気持ちになりながら、それでも全速力で駆け寄った。

今にでも、倒れてしまいそうに見えたから。

俺の予想は、間違いじゃ無かったらしい。
俺が駆け寄るのとほぼ同時に、士郎の身体がゆっくりと崩れ落ちたのだから。
慌てて抱き起こすと、士郎意識がある事を確認した上で身体の状態を調べていく。

困った事に、俺は『あの時記憶』をハッキリ覚えて居ないので、自分の身体がどういう状態だったのか判らないから。


to be continues……?


 


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