☆★☆ 落ちた先は……!? 衛宮さん家の士郎くん In 戦国BASARA ☆★☆
えと……これは、どう考えるべきなんだろうか?
あの時、あの場で動けるのは俺だけだったから、無茶を承知で『大聖杯』の中に飛び込んで中から鍵を掛けるなんて真似をした事に関して、後悔はない。 その結果、『大聖杯』の中から繋がっていた『』への道を辿ることになるなも、まぁ仕方がないだろう。
でもさ、なんでいきなりその流れから弾き飛ばされたかと思う間もなく、まっ逆さまに墜ちないといけないのかな?
思わずそんな風に考えてしまったのは、立派な現実逃避だといっていいだろう。 だが、思わずそんな風に考えても仕方がない状況だといって良い。 どう考えても、俺が居る現在位置は普通ではありえない高度から真っ逆さまに落下しているのだから。
それにしても……かなり高い位置からの落下だよな、これ。 まるで、これって以前アーチャーから聞いた、並行世界での遠坂による『アーチャー』の召喚に近いんじゃないだろうか? と言うより、こんな高度から墜ちて助かるんだろうか、俺。
一応、アーチャーのように英霊じゃなく人間だから、かなりヤバいんじゃないかと思うんですが、この状況。
そんな風に焦っていても、対応策は頭に浮かばない。 しかも、次第に墜ちていく先にある地上の様子が見えてくる。 見る限り、人が多く居る街中じゃなさそうなのが、まだ救いなのかな?
あー……なんか、このままだと俺が墜ちる先は、畑か何かみたいだ。 視力を強化して地上の様子を見たら、農作物が色々と見えたし。 あ、農作業してる人も居るや……って、これヤバくない!?
何か、凄く嫌な予感を頭の中でヒシヒシと感じるんですけど!
絶対に、あの畑の中に突っ込んじゃ駄目だって、俺の勘がそう告げてる。 それやると、死亡フラグ確定だって。 あの畑は、絶対に荒らしちゃいけない聖域なんだ。
そう、頭の中で思った途端、俺は少しでも現在位置から墜落地点をずらすべく、思考を巡らせ。 ふと、ある愛用の品を思い出すと、そのままそれを投影した。
それは、普段戦闘時の防御の要として用いている『マグダラの聖骸布』だ。 もちろん、今回の使用方法は誰かを拘束するとか、身の守りを固める為じゃない。 両手でそれを空気を孕むように広げ、空気抵抗を利用して落下速度を落とすのと同時に、落下地点を今の場所から風の流れを借りて移動させるためだ。 丁度いい事に、風向きは畑のある場所から西側の何もない場所の方へと流れている。 これなら、上手く動けば畑に被害は出さずに済むし、落下自体による俺への被害も減らせるだろう。
あー……ただし、地上に到着するまでに、突風が吹いたり風向きが変わるとかのアクシデントが発生しなければだけど。
……って、そんな風に僅かにでも頭の中で考えたら、本当に風向きが変わりやがったよ! 全く、そんなに運命の神様ってやつは俺の事が嫌いなんだろうか? とは言っても、畑の方向に変わった訳じゃなかったからマシだけどさ。
で、俺が落ちた先はと言うと、畑に水を引くために使っているだろう、それほど深さはないけれどちょっとだけ広めの川の中だった。
しかも、俺が落ちた衝撃によって、思い切り水飛沫があがったっちゃった訳で。 その水飛沫の一部は、間違いなく畑へと降り注いじゃったとしても、こればかりは不可抗力だよな、うん。 あくまで、それを狙っての行動じゃないんだし。
……なんて、俺は思わず遠い目をしながら現実逃避をしていたり。
だって、目の前に頬に傷のある強面のお兄さんが、それこそ凄い形相でこっちを睨み付けながら走ってくる姿が見えるんだもん。 アレ……あの人って……考えたくないけど、あの人だよね? もしかして、俺、とんでもない所に落ちちゃったんじゃないだろうか?
あー……アーチャー、あんな無茶な事を言った事とか謝るから、早く迎えに来てくれないかなぁ……
俺のそんな一方的な願いは叶う筈がなく、確実にこちらに走ってくる強面のお兄さん。 まぁ、彼の反応は当然の事だろう。 この畑が、どれだけ彼にとって大切なものなのかという事位、俺だってちゃんと知っているし。 でも、それを口に出して言う事はもちろんだが、表情にだって【知っている】という事などおくびにも出さず、それでいて目の前の畑の様子を感嘆の念を抱きつつ、つぶさに観察する。
だって……それ位、彼の畑は立派な野菜がたわわに実っている素晴らしいものだったんだから、仕方がないだろう?
それこそ、家の家事を任されている主夫としては、これほど見事な野菜を見るのは珍しいのだ。 幾ら、普段買い物をする商店街の野菜が、農家から直送されてくる物があるとは言っても、それでもこれほど見事な野菜はそうそうお目にかかった事はない。 どうしても、俺たちの時代は大量生産が主流な為に、野菜の質とか味などがこの時代のものよりも落ちる事が多々あるのだ。
こればかりは、土とか空気とか水とかの問題があるから、仕方がないんだけどさ。
んん? これ……アブラムシだよな。 どんなに手入れをしていても、これだけ広い畑だと完全に対応しきれない部分も出るのか。 まぁ、こちらに向かって走ってくる人物が、常に畑に付いていられる訳じゃないんだろうから、見逃した部分があるものも当然だけどさ。
「……テメェ……一体どこから来やがった!? 人の畑に、こんな真似をしておいて、無事で帰れると思ってんのか!?」
俺の前に来るなり、思い切り凄んでくるお兄さんに対し、俺は出来るだけ慌てないように気を付けながら口を開く。 だって、下手な誤解を受けた時点で、この世界じゃなく実に首が飛ぶし。
「お、俺は小さな村に住む鍛冶師見習いで……剣を打つのに必要な新しい鉱石を探して旅してて……目的の鉱石を見つけたから、試しにそれを焙焼しようとして日にくべたら、いきなり爆発したんだ…… 多分……火薬の材料が少し交じってたんだと思う。 それだけなら問題なかったんだけど……俺、偶然火縄銃用の火薬を手に入れて、荷物の中に入れっぱなしにしてたから……色々とまじりあってすごい爆発を起こしたみたいで、吹き飛ばされて気が付いたら空を飛んでたんだ。 後は、お武家さまが知ってる通り、落下するままに畑の隅の小川に落ちたんです…… そ、それより、そこの葉っぱの裏にアブラムシが付いてます。 放っておくと良くないし、ちゃんと対策とってますか? 俺の住んでた村じゃ、木酢液を薄めたのを撒いたり唐辛子を焼酎に漬けたものを薄めて撒いて、野菜に影響を出さずに退治しているんですけど……」
つい、気になった野菜の葉の裏に付いているアブラムシを指し示しながら、どうするのか尋ねてしまっていた。 一緒に、まだこの時代にあるのか判らないけれど、無農薬で育てる野菜の害虫駆除に使って居る手段を口にしてしまったが、まぁ問題はないだろう。 目の前のお兄さんなら、もし本当にその方法を知らなかったとしても、野菜の為なら参考にして試してくれそうだし。 そんな風に、出来るだけ別の事に思考を回すのは、間違いなく現実逃避なんだろう。 ちゃんと、俺にだってそれ位の自覚はあった。
俺の正面に仁王立ちする、顔に傷が強面のお兄さん―多分、間違いなく片倉小十郎だろう―は、俺の言葉を吟味しているようだった。 それは当然の反応だろうと、言った俺自身でも思う。 空から降ってきた時点で、かなり怪しい存在だって自覚はあるし。 それでも、俺に敵意がない事に関しては認めてくれたらしく、先程よりは殺気は少ない。
まぁ……先程披露した、畑の手入れに関する知識が、その殺気を弱める要因になっているんだろうけど。
そうやって考えると、本当に畑と野菜が好きだよな、この人。 歴史に名を残すくらい有名な武将の筈なのに、農作業をするための格好とか良く似合ってるし。 ホント、あり得ないよなぁ。 俺達の世界の戦国時代じゃ、どうやっても絶対にあり得ない事だよ、武将が農作業なんて。
BASARAだからって言っちゃうと、それまでかもしれないけどさ。
そんな思考を巡らせる時間は、僅かに三秒。 複雑な思考でも、短い間に済ませるように特訓を重ねた結果だけど、それが良かったのか悪かったのか、正直に言っていまいち判らないよなぁ、こうなるとさ。 とにかく、今の俺にとって一番重要なことは、目の前の御人を怒らせる事無く、どうやってこの場を乗り切るかだよな。 この場さえ乗り切れば、城下町に紛れて生活していける自信はあるし。
まぁ、それ以外にも生き残る方法はあるけど……出来れば、余りそれはしたくない。 だって、それはこの世界の戦に参戦するのと同意語だから、だ。 いや、うん。 そりゃ、生で婆裟羅技とか見たいけどさ。 だからって、この世界で戦場に出るつもりはないんだよな。 基本的に、俺の能力は『造る者』として特化したものであって、『戦う者』じゃない。 勿論、一度戦場に出れば戦えないことはないけれど、自分から戦場に赴く気は無いんだ。
少なくとも、俺一人では。
そう、俺が自分から戦場に赴くとしたら、アーチャーが側に居る事が条件になるんだよな。 俺とアーチャーは、今まで常に一緒にいたから、戦場に出る際には作戦を練るのにも互いの存在が大前提で、居ない状態では考えられない。 と言うのか、俺は基本的にアーチャーのサポートがメインであって、単独での戦闘参加は殆んど無い為に、戦って居る間に無意識にアーチャーが居る場合の行動を取り、その結果として隙が出来る可能性が高いのだ。
それが判っていて、戦場に出るなんて選択は出来ない。
俺がうっかり隙を見せたがゆえに、そこに付け入られて陣営が崩れるなんて事態になったら、それこそ目も当てられない。 だからこそ、最初から戦いに参加するのは選択肢から除外しているのだ。 俺がそんな風に思考を巡らせる間に、どうやら目の前の人物は俺をどうするか、その対応を決めたらしい。 真っ直ぐにこちらを見て、問い掛けてくる。
「それが真実たとして、だ。 お前は国のどこの生まれだ? 少なくとも、この奥州の生まれじゃないな。 奥州の生まれなら、あ 里には、家族やら身寄りがいるのか?」
真剣な眼差しは、それこそ鋭い刃のような威力を持っていたが、俺はそれに怯む事はない。 ただ、それだと普通の村人には思われないだろうと考えて、困惑した様に視線をさ迷わせる。 出来るだけ言葉を選びながら、俺は目の前の相手からの質問に答える事にした。
「すいません、俺、良く解りません。 俺の村は、長から指名を受けた者以外は他の村とは関わりを持たない決まりなんです。 村の外に出ても、人里の側には行かない誓約を交わさなきゃ無理で。 だから、国がどうとかも全く俺は知らない。 それと……家族は、双子の兄と義理の父親、義理の妹がいる。 ただ、俺が剣の材料を探すために村を出て直ぐに、戦争に巻き込まれたって連絡が来たから、今の状況は判らないんだ。」
少し悲し気に目を伏せながら、そう口にすると目の前の人の殺気がまた小さくなる。 やっぱり、この人は人が良くて優しいからな。 だから、俺の言葉を聞いて同情と言うのか、心配してくれているんだろう。 まだ、俺の事を信用した訳じゃないんだろうけど、それでも本当だったならば確かに保護すべき対象として写るだろうし。
そう思うと、少しだけ罪悪感が湧いてくる。 今の俺の話は、かなりの割合で嘘が混じっているからだ。 もちろん、それはこの世界には俺と言う存在を証明するものがないからで、嘘が吐きたい訳じゃない。 それなら、いっそ全部話そうかとも考えなくもなかったのだ。 ただ、その場合は当然だけどこの世界に来る切っ掛けになった事を、包み隠さずに話す必要があるだろう。 もちろん、俺が持っている能力なども全部、だ。 その中には、この世界の中で知られていない知識が含まれている可能性だって、それこそ山程ある訳で。
俺のうっかりで、この世界を変な風に変えてしまうなんて事態だけは、絶対に避けなくちゃいけないと思うのだ。
特に、俺がこの世界で気を付けるべきなのが、基礎知識の漏洩だろう。 俺の世界での歴史や、この世界とそっくりそのままなゲームがあるなど、絶対に知られたら不味い。 当然だろう。
誰だって、自分が別の世界の住人の想像による玩具として存在しているなんて、知らされても信じられないだろうから。
寧ろ、そんな知識がある俺の事を信じることなど、まず出来ない筈だ。 警戒されるだけなら、それこそまだマシな方。 最悪な場合、問答無用で拘束された挙句、持てる知識を全て絞り取られ、その上で死ぬまで幽閉されかねない。
もちろん、どちらかと言えば義理人情に厚い所がある目の前の人が、いきなりそんな真似をするとは思えないけどさ。
俺が黙って思考を巡らせていると、目の前の農民の扮装をした御人が改めて口を開く。
「そう……か。 最近は、随分戦は下火になった筈なんだが、それでも小競り合いが全く無い訳じゃねぇ。 お前の村も、そんな小競り合いに巻き込まれて被害に遭ったんだろうな。 そういう事なら、話は別だ。 もし、お前に行く先がないのなら、うちで住む所と職を世話してやっても良い。 鍛冶師見習いなら、そこそこ仕事もあるだろうし、な。 それ以外が良いなら、近くの村の農民に話を通してやってもいい。 さっきみたいな事を知ってるなら、農民と一緒にやっていけるだろうし、な。」
真っ直ぐ、こちらを見据えながらの言葉に、俺はどうするべきかと思考を巡らせる。 この提案は、俺にとって悪い話じゃない。 アーチャーが迎えに来るまで、この世界に留まる為の居場所の確保は必須事項である。 それを手配して貰えるなら、このままお願いするのも悪くないのだ。
そう……深くかかわり合いになった為に、戦に巻き込まれなくて済むのならば。
その辺りが微妙なのが、考え処である。 何せ、俺の目の前に立っている人物は、この世界の主人公の側に控えてて、この世界の中心人物たちの一人でもあるんだよな。 そんな相手に関わって、本当に面倒な事態にならないで済むのか、微妙に不安が残るのだ。 ただ、今の申し出はあくまでも好意からの物であり、断りにくいのも事実だけど。
さて、どうしたものかな?
答えに迷いつつ、ある事に気が付いた俺は真っ直ぐに見返しながら、軽く首をかしげ。 疑問に思った事を、そのまま相手に向けて問い掛けた。
「……あの……なんでそこまでしていただけるんですか? お互いに、出会ったばかりなのに…… それに、そんなに簡単に言って大丈夫なんですか? もしかして、すごくお偉いお方なんですか?」
一応、今の俺は何も知らない振りをしなきゃいけないだろう。 本当は、名前も立場も性格もある程度までは把握しているけど、やはり俺が知っているのは表面的なものばかりだろうし。 中途半端な知識を頼りにするより、俺自身が直接見聞きして得た知識を信用するべきだろう。
現に、目の前の人物は予想以上に懐が広いみたいだし。
頭の端でそんな事を考えながら、黙って俺が答えを待っていると、自分がまだ名乗っていなかった事に気が付いたらしい。 少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと口を開いた。
「……そういや、侵入者だと思っていたから、きちんと名乗って無かったな。 俺の名は片倉小十郎だ。 この奥州じゃ、『竜の右目』と呼ばれている。 これでも、それなりの立場にいるからな。 俺がさっき言った程度の口利きなら、問題なく出来るから安心していいぞ。 大体、最初から出来ない提案なんざ、するつもりもねぇしな。」
ニヤリと口の端を上げる様は、本当に見ているだけで男前だとおもう。 やっぱり、男の人はこれ位の度量がなきゃ駄目だよな、うん。 目の前の男前な片倉さんの物言いに、思わず見惚れながらもどうするべきか答えを考える。 せっかくの提案だし、受けた方が良いのは決まっている。 もちろん、これは単純に好意からじゃない部分がある事も俺はちゃんと判っていた。 片倉さんは、怪しい存在を放置するより管理下に置いた方が良いと判断したからこそ、こう言い出したんだろう。 さっきの自己紹介の時に、自分の立場をはっきり名乗らなかったのも、そのあたりの考えからだと思うし。
だから、俺はその辺りに関して気にする事なく流す事にした。 むしろ、この人の前で一般人を装うなら、その辺りについて突っ込む訳にはいかないだろう。 様々な点から考えて、何も知らない筈の俺がその事に気が付いている方が、どう考えてもおかしいだろうし。 俺は、この世界の住人のように婆裟羅を使えないのだから、一般人だと言っても良いよな?
だって、俺の能力は戦闘向きの能力じゃないし。
そりゃ、アーチャーがやるような方法も出来なくは無いけど、やるつもりはないんだよな。 俺が投影出来る剣の大半は、西洋剣や海外の物ばかりだからさ。 その辺りを追求されたら、どうしても言い訳が出来ないんだよね。 そうやって考えると、やっぱり一般人として振る舞うのが正しいと思うのだ。 武器の知識に詳しいのは、鍛冶師として様々な物を見たことがあるって言うことにしたら良いだろうし。 とにかく、俺自身の素性は可能な限り伏せておきたいんだよな。
俺と言う異分子が与える影響は、出来る限り抑えるべきだろうから。
まぁ、こんな風に物を考えるべく、俺が割いた時間は僅かに三秒。 色々な意味で、高速思考は便利だよな、うん。 どんなに複雑な思考を巡らせても、長考していることを悟らせないから相手に不信感を与えないし。 そんな事を頭の端で思いながら、俺は片倉さんへの答えを口にする。
「それなら……大変申し訳ないんですけど、お願いしても良いですか? 俺みたいな、流れの鍛冶師なんて立場だと、生活するにも収入を得難いんで……正直、片倉さんの申し出はすごく助かります。 路銀も殆ど無くて、山の中のにある木の実や茸を採ったり、罠を仕掛けて兎を捕ったりして、何とか食べ繋いでましたし。」
何気なく、路銀が無くても食生活が出来ていた理由を披露すれば、俺がそれほど痩せこけて居なかった事に納得している様子が伺える。 いや、来たばかりのこの世界じゃやって無いけど、実際に元居た世界でサバイバルの際に行なっていた事だし、片倉さんの世話にならないなら実行するつもりだったから、全くの嘘じゃない。 むしろ、俺の逞しい生活力に感心したのか、気が付けば片倉さんは頭を撫でてくれていた。
や、俺はそんなに小さな子供じゃないから。
そうは思ったけど、片倉さんの手は暖かく優しくて、振り払ったりなんて出来なかった。 外見を見るだけだと、強面でまるでヤの付く職業の人みたいだけど、本当は優しく面倒見が良くて頼りになる人だと思う。 まぁ、少々融通が利かない真面目で不器用な人でもあるけど。 味方には優しいけど、敵対する者には一切の容赦がない。 『龍の右目』を名乗る身として、政宗を護るのならば当然の行動なのかも知れない、と思わなくもないけどさ。 それら、全部を含めて『片倉小十郎影綱』と言う人を構成している。
知識として知っていても、こうして直接あって見ると、やっぱり違うよなぁ……
好きなゲームだったから、散々やり込んだ分も『BASARA』の世界を知っているだけに、しみじみとそう思いながら、俺は片倉さんからの申し出を受けた後の事へと思考を巡らせる。 少なくとも、俺の周囲からの扱いは『片倉さんからの紹介された者』として、相応に遇されるだろう。 これに関しては、この状況下では仕方がないと諦める事にして、だ。
問題は、そこから先の事である。
俺を、片倉さんの関係者としてみるのではなく、単なる『見習い鍛冶師』だと思ってくれるなら、正直に言ってさほど問題はない。 俺に出来る事の中で、この世界でも問題にならない腕前を披露すれば良いのだから、むしろこの時代での普通の生活が可能だろう。 しかし、だ。 『片倉さんの関係者』等の『戦に利用価値がある存在』だと認識されたら、かなり困る事になりかねない可能性が高い。 戦国時代を舞台にしているだけあり、それこそ油断していたら簡単に足元を掬われかねない世界なのだ。
地位が高い武将に、付け入る隙を見つけて放置するほど、甘い考えのものばかりが各国のトップに居る訳じゃないのである。
故に、戦に関わるつもりがないのならば、俺自身、この状況への対応をそれなりに考える必要があった。
to be continues……?
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